今秋「ガイドクラブ復活」のお知らせ
奈良は、『万葉集』あるいはもっとそれ以前の時代から現在に至るまで、大和や日本の内外から、様々な旅人を迎えて来た土地です。日本とフランスの文化交流活動に携わっている私たち奈良日仏協会では、かつて会員有志が「ガイドクラブ」を作り、奈良を訪れるフランス人にフランス語でガイドをするという活動をしていました。ここ数年中断されていましたが、この秋、会員のフランス人の友人を浄瑠璃寺に案内することになり、久しぶりに再開します。浄瑠璃寺は実際には「大和」ではなく「山城」に位置していますが、近鉄奈良駅からバスで25分くらいの所にあり、奈良観光と合わせて訪れることの多いお寺です。
◇9月19日(土)勉強会開催 (14:30~16:30)
奈良在住のピエール・レニエさんを講師にお迎えして、浄瑠璃寺のことをフランス語ではどのように紹介すればいいのか、一般的なことを習います。さらに、かつてこの寺に訪れた二人の旅人の文章を紹介し、彼らがここで何をどのように感じたのか考えてみます。ひとつは哲学者・和辻哲郎(1889-1960) の『古寺巡礼』(大正8年初版、昭和21年改版、浄瑠璃寺を訪れた時のことを記した部分とその仏訳)、もう一つは作家・堀辰雄(1904-1953) の『浄瑠璃寺の春』(昭和18年『大和寺・信濃路』所収、日本語のみ)です。以下に和辻の一節を紹介します。
「この心持ちは一体何であろうか。浅い山ではあるが、とにかく山の上に、下界と切り離されたようになって、一つの長閑な村がある。そこに自然と抱き合って、優しい小さな塔とお堂とがある。心を潤すような愛らしさが、すべての物の上に一面に漂っている。それは近代人の心にはあまりに淡きに過ぎ平凡に過ぎる光景ではあるが、しかしわれわれの心が和らぎと休息とを求めている時には、秘めやかな魅力をもってわれわれの心の底のある者を動かすのである。」
Quel sentiment était-ce donc? Certes, c’était une montagne peu profonde, mais tout de même, sur cette montagne, il y avait un village calme, comme s’il était détaché de ce bas monde. Et là, il y a cette élégante petite pagode et le pavillon du temple enlacés avec la nature. Au-dessus de tout cela, plane un charme adorable qui pourrait enrichir le cœur. C’est un paysage trop léger et trop banal pour le cœur de l’homme moderne, mais lorsque notre cœur a besoin d’harmonie et de repos, son charme discret fait vibrer quelque chose au fond de notre cœur.
外国人であれ日本人であれ、誰かにある場所のことを紹介する時、かつて訪れた人のことを知ると、自分自身の経験も深められるような気がします。10月10日の散策には参加できずとも勉強会のみの参加も歓迎です。
○参加費:会員500円 一般800円(当日配布資料代含む)
○場所:生駒市芸術会館美楽来・セミナー室1
○申込先:Nasai206@gmail.com (9月1日以降)tel&fax 0743-74-0371
◇10月10日(土)浄瑠璃寺散策 (12:45集合~16:15解散、その後、参加者有志で飲み会)
浄瑠璃寺は、平安時代に末法思想が流行った時に多数建立された九体阿弥陀堂が唯一残る貴重な寺院です。境内は、東には東方浄土の薬師如来を安置する三重塔(国宝)、西には西方浄土の阿弥陀如来を安置する本堂(国宝)が、中心には池があり、この形が「浄土式庭園」を形作り、仏教の中の極楽浄土の世界を表しているとされています。当日は、講師のピエール・レニエさんと客人のフランス人とともに、近鉄奈良駅で待ち合わせて、路線バスで浄瑠璃寺に向います。この日のみの参加可能。
○参加費:会員1500円 一般2000円(定員12名、要予約、バス代・拝観料込み)
○申込先:Nasai206@gmail.com (9月1日以降) tel&fax 0743-74-0371