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『サムライ』 Le Samouraï

第47回 奈良日仏協会シネクラブ例会の案内
47ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

◇日時 2018年6月24 日(日) 13:30~17:00
◇会場 奈良市西部公民館5階第4講座室(予定)
◇プログラム 『サムライ』(Le Samouraï、1967年、105分)
◇参加費  奈良日仏協会会員・学生:無料、一般:300円
◇飲み会  例会終了後「味楽座」にて
◇例会・飲み会とも予約不要
◇問い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

(スタッフ)
監督・脚本 ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville
撮影監督  アンリ・ドカ Henri Decae
美 術  フランソワ・ド・ラモット François de Lamothe
編 集  モニーク・ボノ Monique Bonnot
音 楽  フランソワ・ド・ルーベ François de Roubaix

(キャスト)
ジェフ・コステロ アラン・ドロン Alain Delon
警視 フランソワ・ペリエ François Périer
ジャンヌ ナタリー・ドロン Nathalie Delon
ヴァレリー カティ・ロジェ Caty Rosier

 『パリの灯は遠く』、『仁義』に引き続くアラン・ドロン特集第三弾。『仁義』と同じメルヴィル監督作品です。冒頭、延々とセリフなしのシーンが続きます。初めてセリフが出てくるのが、殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)が恋人ジャンヌ(ナタリー・ドロン)にアリバイの依頼をする場面で、約10分後。フランス映画と言えば、言葉が洪水のように出てきたり(昨年シネクラブで見たサッシャ・ギトリはその最たるもの)、詩的な言葉が歌うように語られたり(『天井桟敷の人々』など)するものと思っていましたが、言葉の少なさに驚きます。解説の中条省平によれば、メルヴィル監督がアラン・ドロンに出演依頼した時、セリフが少ないのと、タイトルが気に入って受けたということです。
 この映画の魅力は、無駄な言葉を削ぎ落し、主人公の動きを見せるだけで物語を語っているところにあります。ジェフの立ち居振る舞い、顔の表情、眼の動きをひたすらカメラが追いかけます。プロの殺し屋にふさわしい簡素な居室、小鳥を唯一の友とし、女性に対してもクールな態度を崩しません。トレンチコートにソフトを被り、街路の左右に目を配りながら足早に歩く姿は、プロの殺し屋の一種の美学と言えましょう。
 フィルム・ノワールならではの魅力は、残酷非情な人間関係で、金銭でやり取りされる関係には裏切りが付きものです。もう一つは、サスペンス。車を盗む場面で、50以上あるキーのひとつひとつを順番に試して行くのをカメラは執拗に写し続けます。また殺人犯を目撃した人間が複数いて、その一人一人が主人公の首実検をしたり、アリバイを確かめるのに次々に証人が呼ばれ、そのたびにハラハラしてしまいます。
 また本筋から離れての見どころは、パリのメトロが追跡劇の舞台となっていることで、「シャトレ」や「ポルト・ディヴリ」など、駅構内の昔の様子が映し出されます。メトロ構内の雰囲気は今と変わっていませんが、もぎりのおばさんが居たりするところは面白い。

(ストーリー)
 ジェフ・コステロはプロの殺し屋。殺人依頼を受け、周到なアリバイ工作をしたうえで、ある高級クラブに潜り込み、経営者を殺す。だが、部屋を出るところをピアノ弾きの女に目撃されてしまった。警察が大がかりな布陣で疑わしい者を次々に検挙し、片っ端から尋問し目撃者による首実検にかけていくなか、ジェフもいったんは疑われるが、巧みなアリバイ工作が功を奏し、釈放される。ところが、ジェフが報酬を受け取るため依頼人の代理人との待合せ場所に行くと、逆に撃たれて腕に怪我を負う。そしてまた新たな殺人依頼が。一方、釈放したものの警視はジェフが犯人に違いないと睨んで、アリバイ工作を一つずつ潰しにかかるとともに、部屋に盗聴装置を仕掛け、向かいのホテルから部屋を見張らせ、そしてメトロの駅に何十人もの捜査官を配備しジェフを追跡、プロの殺し屋対警察の徹底した捜索の息詰まる戦いが展開していく。そしてジェフが新たな殺人に赴いた先は、意外な場所、意外な人物だった。

(映画裏話)
 メルヴィル監督は、前作『ギャング』を取り終えたときから、次作はアラン・ドロンで撮ることに決めていたそうで、アラン・ドロンもまた『ギャング』を見て、メルヴィルに出演させてもらえるよう願い出たということです。この『サムライ』は二人が一緒に仕事をした初めての作品で、この後、『仁義』、『リスボン特急』をアラン・ドロン主演で撮影しています。
この映画の冒頭で、『武士道』からの引用として、「サムライの孤独ほど深いものはない。さらに深い孤独があるとすれば、それはジャングルの虎のそれだけだ」という言葉が映されますが、こんな言葉は『武士道』にはないそうで、メルヴィル監督の創作ということです。
 共演のナタリー・ドロンは、アラン・ドロンと1964年に結婚し、映画出演は初めてだったと言いますが、この映画がきっかけとなって、次作『個人教授』でブレーク。しかし、女優業を続けたいナタリーと、それを嫌がるアランとの間の溝が深まり、二人は1969年離婚しています。
 二人が知り合ったきっかけは、アラン・ドロンのボディガードだったマルコヴィッチの紹介ということですが、彼はナタリーの愛人でもあったらしい。そのマルコヴィッチが1968年に殺され、アラン・ドロンは殺人容疑者として取り調べを受けています。が結局真犯人は見つからないまま迷宮入り。映画を地で行くような話ではありませんか。 (杉谷健治)