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秋の教養講座2015:放送から29年、「バロン薩摩の夢を追う」取材回想

日時:2015年11月23日(祝・月)
1) 講演会 15:00~17:00(参加無料) 放送大学奈良学習センターZ308 講義室にて
2) 懇親会 17:20~19:00 頃(参加費:会員3000円、一般3500円) 野菜ダイニング「菜宴」にて

講演者:野島正興 (のじま まさおき)

講演者プロフィール:1947年香川県生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修卒。元NHKアナウンサー、盛岡、徳島、奈良、京都、名古屋、大阪などに勤務。著書『百済観音半身像を見た』『茶の道そぞろ』。現在、大阪経済大学非常勤講師、奈良日仏協会副会長。

主催:奈良日仏協会、放送大学奈良学習センター

参加申込方法: 11月16日までに 奈良日仏協会宛てにEメール又はFAXで送信お願い致します。
E-mail : afjn_info@kcn.jp  Fax : 0742-62-1741

※定員40名を超えた時点で、参加申し込み受付を終了しますので予めご了承願います。

バロン薩摩こと薩摩治郎八は大正末から昭和の初めにかけてパリで活躍したもはや伝説の人物である。フランス滞在中に使った費用は現在のお金なら500億円を下らないとされる。多くの美術、音楽、舞踊、文学などの芸術家と交流し日本に紹介。いわば日仏文化交流の草分け的存在である。フランス政府からレジョン・ドヌール勲章を二度受章している。現在、唯一形となって残るものは、彼がパリ大学都市に建設・寄贈した日本館であり、現在も世界各国からの芸術・学術の徒がここに滞在する。瀬戸内寂聴『ゆきてかえらぬ』、獅子文六『但馬太郎治伝』はいずれも薩摩治郎八をモデルとした小説として知られる。

私は以前、NHK徳島放送局に勤務し、薩摩終焉の地となった徳島に多くの遺品が保管されていることを聞いた。この遺品の文書類などを手がかりに、徳島「バロン・サツマの会」の協力を得て、『薩摩治郎八年譜』(新垣宏一四国大学教授編集)を作成。これを基礎として、私は薩摩治郎八が追い求めた夢は何だったのかを探る四国特集「バロン薩摩の夢を追う」(1986.11.28放送)を企画する機会を得ることになった。番組はのちにBS全国放送となり、放送直後、関西日仏学館(現アンスティチュ・フランセ京都)のミッシェル ワッセルマン館長から電話を受け、番組について講演依頼されたことは驚きとともに印象深い。

ところで、薩摩治郎八の自伝『せ・し・ぼん』には、彼自身の人生を象徴的に語る興味深い二つの文章が見られる。
「生活と美を一致させようとした一種の芸術的創造」
「夢と機会が偶然交触することによって人生の蜃気楼は生まれ出る」
今回は企画、取材、制作の場面を回想し、薩摩治郎八の実績と人物像、放送から29年を経て思う新たな視点についてお話申し上げたい。

さて、10年後の2025年は薩摩が招致した東京帝国ホテルでの「アンリ・ジルマルシェックスピアノ演奏会」(1925)から100年となる。後年、ジルマルシェックスが音楽院長を務めた「ポワチエ音楽院」のフランス人ピアニストの協力を得て、「ジルマルシェックス帝国ホテルピアノ演奏会100年、あの日のプログラム」を何らかの形で実現できないかと、これは私の・・・やはり夢の企画であろうか。

副会長  野島 正興