シネクラブ

『山猫』 Le Guépard

第49回 奈良日仏協会シネクラブ例会の案内
49ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

◇日時 2018年11月25 日(日) 13:00~17:00 le dimanche 25 novembre
◇会場 奈良市西部公民館4階第2会議室 Nara Seibu Kominkan, 4-kai (3ème étage) salle 2 (près de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◇プログラム 『山猫』(Le Guépard, 1963年, 186分)
◇参加費  奈良日仏協会会員・学生:無料、一般:300円
gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membre
◇飲み会  例会終了後「味楽座」にて Réunion amicale au restaurant Miraku-za
◇例会・飲み会とも予約不要
◇問い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

(スタッフ)
監 督 ルキーノ・ヴィスコンティ Luchino Visconti
原 作 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ Giuseppe Tomasi di Lampedusa
脚 色 スーゾ・チェッキ・ダミーコ Suso Cecchi D’Amico
    エンリコ・メディオーリ Enrico Medioli
   パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ Pasquale Festa Campanile
   マッシモ・フランチョーザ Massimo Franciosa
   ルキーノ・ヴィスコンティ Luchino Visconti
撮影・完全復元版監修
ジュゼッペ・ロトゥンノ Giuseppe Rotunno
美 術 マリオ・ガルブリア Mario Garbuglia
装 飾 ジョルジョ・ペス Giorgio Pes
    ラウドミア・エルコラーニ Laudomia Hercolani
衣 裳 ピエロ・トージ Piero Tosi
音 楽 ニーノ・ロータ Nino Rota
使用曲 ジュゼッペ・ヴェルディ「華麗なるワルツ」
指 揮 フランコ・フェルラーラ Franco Ferrara
演 奏 サンタ・チェチリア交響楽団 Symphony Orchestra of Santa Cecilia
編 集 マリオ・セランドレイ Mario Serandrei
製 作 ゴッフレード・ロンバルド Goffredo Lombardo

(キャスト)
ドン・ファブリツィオ サリーナ公爵…バート・ランカスター Burt Lancaster
公爵の甥 タンクレディ…アラン・ドロン Alain Delon
アンジェリカ・セダーラ…クラウディア・カルディナーレ Claudia Cardinale
ドン・カロージェロ・セダーラ…パオロ・ストッパ Paolo Stoppa
公爵夫人 マリア・ステッラ…リーナ・モレッリ Rina Morelli
ピローネ神父…ロモーロ・ヴァッリ Romolo Valli
ドン・チッチョ・トゥメオ…セルジュ・レジアニ Serge Reggiani
パラヴィチーニ大佐…イーヴォ・ガッラーニ Ivo Garrani
シュヴァレ…レスリー・フレンチ Leslie French
カヴリアーギ伯爵…マリオ・ジロッティ(テレンス・ヒル) Mario Girotti
フランチェスコ・パオロ(公爵の長男)…ピエール・クレマンティ Pierre Clementi
コンチェッタ(公爵の長女)…ルチッラ・モルラッキ Lucilla Morlacchi
ガリバルディ軍の将軍…ジュリアーノ・ジェンマ Giuliano Gemma
カロリーナ(公爵の次女)…イーダ・ガッリIda Galli
カテリーナ(公爵の三女)…オッタヴィア・ピッコロ Ottavia Piccolo
パオロ(公爵の次男)…カルロ・ヴァレンツァーノ Carlo Valenzano

『パリの灯は遠く』、『仁義』、『サムライ』に引き続くアラン・ドロン特集しめくくりの第四弾。今回は、時代をさかのぼり1860年国家統一を叫ぶガリバルディ将軍率いる赤シャツ隊が上陸するシチリア島が舞台です。落日を前にした名門貴族の当主の悠揚迫らざる決断と新時代へ飛び込む若者たち。自然、土地、街、交通、屋敷、人々、衣装、光、音・・・。その時代その場所へタイムスリップしたような臨場感、登場人物の語る言葉のひとつひとつが重みをもって伝わる精緻な大作です。バート・ランカスター、クラウディア・カルディナーレ出演。第16回カンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた巨匠の代表作。

(舞台と時代背景)
 イタリア南部のシチリア島。当時はナポリを含む南イタリアと共に《両シチリア王国》に属していた。舞台となるのは、サリーナ公爵家のある島の北岸の都パレルモと、その広大な領地があり夏にそこの別荘で過ごすパレルモの南方、内陸のドンナフガータ村のモデルとなったサンタ・マルゲリータ・ベーリチェ。
 1860年のイタリア統一戦争の時代。イタリアは、サルディーニャ王国と、ローマを中心とする教皇領の他は、他国の影響下にある5つの王国・公国を合わせた集合体にすぎなかった。独立国家であるサルディーニャ王国の主導のもとで独立・統一の運動と戦いが進められ、同年11月に両シチリア王国が滅ぼされ、1861年3月に統一国民国家としての新生イタリアが出発することになる。
 シチリアの歴史は2500年に亘る異民族支配の歴史で、1302年以降はスペインの統治が5世紀半に亘って続き、前世紀からはスペイン・ブルボン王朝の支配下にあった。1860年5月、統一を目指すガリバルディ将軍は義勇軍「千人隊(赤シャツ隊)」を率いてシチリアに上陸する。赤シャツ隊のスローガンは祖国統一と腐敗した貴族支配からの解放であったから、広大な領地と財産を所有する貴族は、大変革かあるいは没落かの局面に立った。こうした時代背景において、原作小説は名門貴族サリーナ家を設定し、歴史の荒海におけるその当主の内面と運命をどのように受け入れるか、また若い世代はいかに進路を見出すかを描く。
 その先の歴史であるが、統一後もローマを中心とする教皇領はフランス軍に守られる体制のままであったことなど、ガリバルディは新しいイタリア王国のあり方に不満をもち、1862年、義勇兵を組織して反乱を起こす。ローマへの侵攻を企て、今度は新王国政府と対立する事態を招く。最終的にローマのイタリア王国併合は1870年10月である。また農民は新政府になっても大土地所有制は廃止されず農地を得られないなどの現実に不満を持つ一方、旧貴族は現状維持された形で支配層として君臨し続ける。大土地所有制が廃止されたのは第二次世界大戦後のことである。
 なおマフィアは、18世紀後半、シチリア西部の農村地帯に発生した武装集団で、山賊の跋扈する無法地帯の治安を維持するとともに農地管理人とともに土地を暴力で支配し勢力を拡大して行ったもので、映画ではそうした背景を窺うことが出来る。

(見どころ)
 《山猫》というのは、シチリアの名門貴族サリーナ公爵家の紋章です。祖国統一と腐敗した貴族支配からの解放を叫ぶガリバルディの赤シャツ隊が上陸し、戦闘が繰り広げられる事態に直面した山猫の当主サリーナ公爵ドン・ファブリツィオ(バート・ランカスター)は、どのような態度を示すでしょうか?
 公爵には長男フランチェスコ、次男パオロ、長女コンチェッタ、次女カロリーナ、三女カテリーナがあり、われらがアラン・ドロンは、公爵の甥タンクレディ役で登場します。ポスターで黒い帯で片目を隠しているのはなぜ? 『仁義』、『サムライ』で見てきた犯罪の血が流れているあのニヒルな表情は今回見られるでしょうか? 公爵は、彼ら若者たちをどのように見ていて、公爵家の将来、自身の生と合わせてどのような判断をするでしょうか?
 さて、クラウディオ・カルディナーレ演じるアンジェリカが登場します。圧倒されます。村長で土地独特の勢力図において貴族を超える大財力をもったドン・カロッジェロの娘なのです。名門貴族の山猫サリーナ公爵は、農村マフィアの山犬ドン・カロッジェロに対してなにを言い出すでしょうか。公爵と公爵家付のピローネ神父や、オルガン奏者のドン・チッチョとのやり取りも実に興味深いです。きれいごとなんかでない、人間の重みがここにも生き生きと浮かび上がります。そして大舞踏会がポンテレオーネ家の大きな大きな屋敷で催されます。滅び行くものと、新しく輝き出すものとの円舞が、目の前で見るようなリアリティをもって展開されるのです。(大内隆一)

『リード・マイ・リップス』Sur mes lèvres

第48回 奈良日仏協会シネクラブ例会の案内
48ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

聴覚障害を持つ女と監獄から出たばかりの男が形作る奇妙な男女の愛の姿。エマニュエル・ドゥヴォスとヴァンサン・カッセルという二人の名優が演じる新しいフィルム・ノワール。
当日は、ピエール・シルヴェストリさんがパリから来日して解説します。乞うご期待!

◇日時 2018年9月9 日(日) 13:00~17:00 le dimanche 9 septembre
◇会場 奈良市西部公民館4階第2会議室 Nara Seibu Kominkan,
 4-kai (3ème étage) salle 2 (près de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◇プログラム 『リード・マイ・リップス』(Sur mes lèvres、2001年、119分)
◇参加費 奈良日仏協会会員・学生:無料、一般:300円 
 gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membre
◇飲み会 例会終了後「味楽座」にて Réunion amicale au restaurant Miraku-za
◇問い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

(スタッフ)
監督 ジャック・オディアール Jacques Audiard
脚本 トニーノ・ブナキスタ Tonino Benacquista
   ジャック・オディアール Jacques Audiard
撮影 マチュー・ヴァドゥピエ Mathieu Vadepied
音楽 アレクサンドル・デプラ Alecandre Desplat
編集 ジュリエット・ウェルフラン Juliette Welfling

(キャスト)
ポール   ヴァンサン・カッセル Vincent Cassel
カルラ   エマニュエル・ドゥヴォス Emmanuelle Devos
マルシャン オリヴィエ・グルメ Olivier Gourmet
マッソン  オリヴィエ・ペリエ Olivier Perrier

Coincée, ordinaire à tout point de vue, Carla Behm manque terriblement de charme. Malgré sa surdité, elle est employée depuis quelques années à la Sedim, une société immobilière. Là, elle effectue toutes sortes de tâches ingrates, qui plus est sous les brimades de ses collègues. Une baisse de forme lui donne le droit d’engager un stagiaire comme assistant. C’est ainsi que Paul Angeli, un ex-détenu marqué par les années de prison, entre dans sa petite existence. Sans réelles capacités, Paul a pour lui son étrange beauté. Surtout, il regarde Carla comme un homme regarde une femme. Un amour platonique mais profond naît entre les deux exclus…

Emmanuelle Devos dans l’enfer de la vie de bureau. On ne voit qu’elle, d’abord, en martyre de la photocopieuse, cachant ses deux prothèses auditives. Vu le talent monstre de l’actrice (récompensée d’un césar pour le rôle), cela pourrait faire un film : la secrétaire demi-sourde, bonne à tout faire dans un cabinet de promotion immobilière… Puis elle commande un stagiaire à l’ANPE, comme si elle commandait un fiancé au Père Noël. C’est Vincent Cassel, cheveux graisseux, accent populaire à tailler au couteau. Cela aussi pourrait faire un film : l’employée frustrée et le stagiaire fruste.

Or, le film, c’est encore autre chose : un polar, une histoire de magouilles, de marigot et de magot. Le scénario se révèle plutôt complexe mais le cinéaste veille à ne jamais couper les ponts avec son atout principal, ce drôle de portrait d’une fille trouble et en pleine mutation : on la découvre peu à peu capable de la même cruauté, tenaillée par le même instinct de domination que ceux qui la brimaient. En ce sens, Sur mes lèvres est un film noir original.
(Pierre Silvestri)

目だたず、これといった取り柄もないカルラ・ベームは、魅力的とはとうていいいがたい女性。耳は聴こえないが、数年前から不動産会社セディムに勤めている。会社では、つまらない仕事をし、その上同僚からはいじめを受けている。体調を崩したため、助手として研修生を雇うことになる。刑務所から出たばかりのポール・アンジェリが、彼女のとるに足りない人生にかかわってくるのは、こうしたわけである。実務的な能力はなくとも、ポールには何かしら魅力があった。ポールはカルラを一人の女として見つめる。プラトニックだが深い恋愛感情が、二人の社会のはみ出し者の間に芽生えていく。

エマニュエル・ドゥヴォス(カルラ役)は、オフィスの生き地獄にいる。はじめは、彼女は両耳に補聴器をかくしつけた犠牲的なコピー係りとしか見えない。この女優の途方もない才能が(この役でセザール賞を受賞)、この作品を映画たらしめている。耳の不自由な秘書、不動産販売代理店の何でも屋の小間使い…。つづいて彼女は職業安定所で、まるでサンタクロースに婚約者が欲しいと頼むかのように、研修生の注文をつける。その彼は、油で汚れた髪の毛をして強烈な下町なまりのヴァンサン・カッセル(ポール役)。彼の存在もまたこの作品を映画たらしめている。欲求不満の女性従業員と粗野な男性研修生の物語。

この映画にはさらにまた別の見どころがある。犯罪映画であり、闇取引、悪人たちの溜り場、隠し金の話であること。脚本はやや錯綜しているが、監督のジャック・オディアールは彼の持ち味を失わないようにしている。性格のわかりにくい奇妙な女の肖像と、そのまったき変化である。彼女が自分をいじめた人々と同じ支配の本能にさいなまれながら、同じ残虐性を持つようになることを、観客は徐々に理解する。この点で、映画『リード・マイ・リップス』はいっぷう変わったフィルム・ノワールとなっている。

『サムライ』 Le Samouraï

第47回 奈良日仏協会シネクラブ例会の案内
47ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

◇日時 2018年6月24 日(日) 13:30~17:00
◇会場 奈良市西部公民館5階第4講座室
◇プログラム 『サムライ』(Le Samouraï、1967年、105分)
◇参加費  奈良日仏協会会員・学生:無料、一般:300円
◇飲み会  例会終了後「味楽座」にて
◇例会・飲み会とも予約不要
◇問い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

(スタッフ)
監督・脚本 ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville
撮影監督  アンリ・ドカ Henri Decae
美 術  フランソワ・ド・ラモット François de Lamothe
編 集  モニーク・ボノ Monique Bonnot
音 楽  フランソワ・ド・ルーベ François de Roubaix

(キャスト)
ジェフ・コステロ アラン・ドロン Alain Delon
警視 フランソワ・ペリエ François Périer
ジャンヌ ナタリー・ドロン Nathalie Delon
ヴァレリー カティ・ロジェ Caty Rosier

 『パリの灯は遠く』、『仁義』に引き続くアラン・ドロン特集第三弾。『仁義』と同じメルヴィル監督作品です。冒頭、延々とセリフなしのシーンが続きます。初めてセリフが出てくるのが、殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)が恋人ジャンヌ(ナタリー・ドロン)にアリバイの依頼をする場面で、約10分後。フランス映画と言えば、言葉が洪水のように出てきたり(昨年シネクラブで見たサッシャ・ギトリはその最たるもの)、詩的な言葉が歌うように語られたり(『天井桟敷の人々』など)するものと思っていましたが、言葉の少なさに驚きます。解説の中条省平によれば、メルヴィル監督がアラン・ドロンに出演依頼した時、セリフが少ないのと、タイトルが気に入って受けたということです。
 この映画の魅力は、無駄な言葉を削ぎ落し、主人公の動きを見せるだけで物語を語っているところにあります。ジェフの立ち居振る舞い、顔の表情、眼の動きをひたすらカメラが追いかけます。プロの殺し屋にふさわしい簡素な居室、小鳥を唯一の友とし、女性に対してもクールな態度を崩しません。トレンチコートにソフトを被り、街路の左右に目を配りながら足早に歩く姿は、プロの殺し屋の一種の美学と言えましょう。
 フィルム・ノワールならではの魅力は、残酷非情な人間関係で、金銭でやり取りされる関係には裏切りが付きものです。もう一つは、サスペンス。車を盗む場面で、50以上あるキーのひとつひとつを順番に試して行くのをカメラは執拗に写し続けます。また殺人犯を目撃した人間が複数いて、その一人一人が主人公の首実検をしたり、アリバイを確かめるのに次々に証人が呼ばれ、そのたびにハラハラしてしまいます。
 また本筋から離れての見どころは、パリのメトロが追跡劇の舞台となっていることで、「シャトレ」や「ポルト・ディヴリ」など、駅構内の昔の様子が映し出されます。メトロ構内の雰囲気は今と変わっていませんが、もぎりのおばさんが居たりするところは面白い。

(ストーリー)
 ジェフ・コステロはプロの殺し屋。殺人依頼を受け、周到なアリバイ工作をしたうえで、ある高級クラブに潜り込み、経営者を殺す。だが、部屋を出るところをピアノ弾きの女に目撃されてしまった。警察が大がかりな布陣で疑わしい者を次々に検挙し、片っ端から尋問し目撃者による首実検にかけていくなか、ジェフもいったんは疑われるが、巧みなアリバイ工作が功を奏し、釈放される。ところが、ジェフが報酬を受け取るため依頼人の代理人との待合せ場所に行くと、逆に撃たれて腕に怪我を負う。そしてまた新たな殺人依頼が。一方、釈放したものの警視はジェフが犯人に違いないと睨んで、アリバイ工作を一つずつ潰しにかかるとともに、部屋に盗聴装置を仕掛け、向かいのホテルから部屋を見張らせ、そしてメトロの駅に何十人もの捜査官を配備しジェフを追跡、プロの殺し屋対警察の徹底した捜索の息詰まる戦いが展開していく。そしてジェフが新たな殺人に赴いた先は、意外な場所、意外な人物だった。

(映画裏話)
 メルヴィル監督は、前作『ギャング』を取り終えたときから、次作はアラン・ドロンで撮ることに決めていたそうで、アラン・ドロンもまた『ギャング』を見て、メルヴィルに出演させてもらえるよう願い出たということです。この『サムライ』は二人が一緒に仕事をした初めての作品で、この後、『仁義』、『リスボン特急』をアラン・ドロン主演で撮影しています。
この映画の冒頭で、『武士道』からの引用として、「サムライの孤独ほど深いものはない。さらに深い孤独があるとすれば、それはジャングルの虎のそれだけだ」という言葉が映されますが、こんな言葉は『武士道』にはないそうで、メルヴィル監督の創作ということです。
 共演のナタリー・ドロンは、アラン・ドロンと1964年に結婚し、映画出演は初めてだったと言いますが、この映画がきっかけとなって、次作『個人教授』でブレーク。しかし、女優業を続けたいナタリーと、それを嫌がるアランとの間の溝が深まり、二人は1969年離婚しています。
 二人が知り合ったきっかけは、アラン・ドロンのボディガードだったマルコヴィッチの紹介ということですが、彼はナタリーの愛人でもあったらしい。そのマルコヴィッチが1968年に殺され、アラン・ドロンは殺人容疑者として取り調べを受けています。が結局真犯人は見つからないまま迷宮入り。映画を地で行くような話ではありませんか。 (杉谷健治)

『仁義』 Le Cercle rouge  

「第46回 奈良日仏協会シネクラブ例会」の案内
46ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

◇日時 2018年2月25 日(日) 13:30~17:00
◇会場 奈良市西部公民館5階第4講座室
◇プログラム 『仁義』(Le Cercle rouge, 1970年, 140分)
◇参加 費 奈良日仏協会会員・学生:無料  一般:300円
◇飲み会 例会終了後「味楽座」にて
◇例会・飲み会とも予約不要
◇問い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

スタッフ
監督 ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville
脚本 ジャン=ピエール・メルヴィル Jean-Pierre Melville
製作 ロベール・ドルフマン Robert Dorfmann
音楽 エリック・ドマルサン Éric Demarsan
撮影 アンリ・ドカエ Henri Decaë

キャスト
コレー   アラン・ドロン Alain Delon
ジャンセン   イヴ・モンタン Yves Montand
ヴォーゲル   ジャン・マリア・ヴォロンテ Gian Maria Volonté
マッテイ警部   ブールヴィル Bourvil
サンティ   フランソワ・ペリエ François Périer
リコ   アンドレ・エキナン André Ekyan

 前回の『パリの灯は遠く』の例会では参加者のみなさんが次から次と発言、「シネクラブ」の醍醐味を味わうことができました。自分でも自分の行動を説明できないような複雑な人間存在をアラン・ドロンが演じたことで、観る者はいっそう引きこまれたように思います。2月の例会では、俳優アラン・ドロンのまた異なる魅力を引き出しているジャン=ピエール・メルヴィルの監督作品をとりあげます。
 メルヴィルは昨年2017年生誕100周年を迎え、フランスでも日本でも特集上映会が開催されました。彼の作品にみなぎる独特の緊張感、画面構成、凝縮された台詞、人間の心の闇と愛に肉迫するドラマの演出等々には、尽きせぬ魅力があります。とくに『仁義』の絵画を思わせるような画面には、思わず息をのんで見入ってしまいます。ベースとなるブルーブラックの色調に黒が深みを加え、時折あらわれる明るい緑や白も印象的です。
 アラン・ドロンは『サムライ』『仁義』『リスボン特急』の三作のメルヴィル作品に出演し、メルヴィルの美学を確実に理解し体現しています。スター俳優であるにもかかわらず静かな抑制のきいた演技で、ブールヴィル、イヴ・モンタン、ヴォロンテら共演俳優たちの個性を光らせています。『仁義』はフランスで433万人以上の大ヒットを記録し、商業的にも芸術的にも成功をおさめたまぎれもない傑作です。

 映画の原題はLe Cercle rouge「赤い輪」。「人はそれと知らずに必ずめぐり会う。たとえ互いの身に何が起こり、どのような道をたどろうとも、必ず赤い輪のなかで結びあう」(ラーマ・クリシュナ)の言葉が、映画の冒頭で紹介されます。日本語で、恋人同士の運命的な出会いを「赤い糸で結ばれている」と言うことがありますが、この映画に登場するのは「いわくつきの男」ばかり、彼らの宿命的な出会いと行動の物語です。
 ヴォーゲル(ジャン・マリア・ヴォロンテ)は、列車護送中にマテイ警部(ブールヴィル)の監視をふりきって逃走、その途中で刑務所から出所したばかりのコレー(アラン・ドロン)の運転する車のトランクの中にしのびこみます。警察に追われるヴォーゲルをかくまうコレー、昔のヤクザ仲間から追われるコレーを助けるヴォーゲル、ふたりの間にクールな友情のようなものが生まれ、さらに元警察官のジャンセン(イヴ・モンタン)を仲間に加えて、彼ら3人はパリの宝石店の強盗を決行します。マテイ警部は彼らを捕まえるために、卑劣な策略をめぐらせて、ナイトクラブを営むサンティ(フランソワ・ペリエ)に情報提供させます。
 人物たちの間で交わされるのは説明抜きの短い言葉のみ、彼らの表情や仕草や行動によって話が展開していきます。「追われる者」と「追いつめる者」の闘いに加えて、人物間の駆け引き・共感・裏切りや、ひとりの人間としての決断など、随所で観る者に考えさせ、余韻が残る作品となっています。

『パリの灯は遠く』 Monsieur Klein

お知らせ
10月22日(日)に開催予定でした「第45回奈良日仏協会シネクラブ例会」は、
11月26日(日)に変更になりました。皆さまの参加をお待ちしております。

「第45回 奈良日仏協会シネクラブ例会」の案内
45ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

◇日時    2017年11月26 日(日) 13:30~17:00
◇会場    奈良市西部公民館5階第4講座室
◇プログラム 『パリの灯は遠く』(Monsieur Klein, 1976年, 122分)
◇参加 費 奈良日仏協会会員・学生:無料  一般:300円
◇飲み会 例会終了後「味楽座」にて
◇例会・飲み会とも予約不要
◇問 い合わせ 浅井直子 Nasai206@gmail.com

(スタッフ)

監督 ジョセフ・ロージー Joseph Losey

脚本 フランコ・ソリナス Franco Solinas

   フェルナンド・モランディ Fernando Morandi

撮影 ジェリー・フィッシャー Gerry Fisher

音楽 エジスト・マッキ Egisto Macchi

   ピエール・ポルト Pierre Porte

(キャスト)

ロベール・クライン     アラン・ドロン Alain Delon

フロランス             ジャンヌ・モロー Jeanne Moreau

管理人                 シュザンヌ・フロン Suzanne Flon

ジャンニー             ジュリエット・ベルト Juliet Bert

ピエール               ミシェル・ロンズデール Michael Lonsdale

ニコル(ピエールの妻) フランシーヌ・ベルジェ Francine Berge

(ストーリー)

1942年1月、パリはドイツの占領下にあり、対独協力のヴィシー政府はユダヤ人排除の法律をつぎつぎと成立させていました。映画の冒頭、医師による非人道的な人種選別の場面に私たちは衝撃を受けます。多くのユダヤ人は国外へ逃れようとしていました。主人公のフランス人美術商ロベール・クライン(アラン・ドロン)は、贅沢で放縦な生活をしています。それというのも彼のもとへは、ユダヤ人たちが所蔵する美術品を換金するためつぎつぎと訪れ、彼は客の足元を見て安値で買い取り儲けているからです。

ある日彼は玄関に不審な刊行物が置かれているのを見つけます。それは購読を申し込んだ覚えのない「ユダヤ通信」という刊行物で、宛先は確かに彼でした。不安に襲われ調べてゆくと、彼と同姓同名のユダヤ人がいて、彼を身代わりにして自分は姿を消し、危難を免れようとしていることが分かってきます。彼の家には早くも刑事がやってきました。街にはユダヤ人の一斉検挙が近い動きが見られます。一刻も早く同名のユダヤ人を見つけて、自分の安全とアイデンティティを守らねばなりません。彼の必死の奔走が始まります…。

(ジョセフ・ロージー監督とこの作品について)

ジョセフ・ロージーはアメリカ・ウィスコンシン州生まれで、1943年にMGMと監督の契約を結びますが戦争のため中断、48年、はじめての長編で、反戦を訴えた『緑色の髪の少年』を発表しました。その後いくつかの作品を発表しますが、彼の左翼思想に対する非米活動委員会の追及を免れるため、51年イギリスに亡命しました。イギリスでも当初は本名での活動はできず、四つの偽名を使って作品を発表しています。57年から再び本名で作品を発表しましたが、この頃から彼の評価が、特にフランス、ヌーヴェルヴァーグの人たちの間で高まり、フランスで撮った「エヴァの匂い」(62)や、イギリスで撮ったハロルド・ピンター脚本の「召使」(63)で彼の評価が確立しました。その後拠点をフランスに移し、スターを用いた大作を発表してゆきます。アラン・ドロン主演の「暗殺者のメロディー」(72)がその第一作で、1940年のトロツキー暗殺事件を描いています。この「パリの灯は遠く」(76) はドロン主演第二作で、ドロンのキャラクターの一面をよく捉えています。理由が分からずに逮捕される銀行支配人フランツ・Kを描いたカフカの小説[『審判』(1915) を思わせるものがあり(主人公の頭文字が同じなのは偶然?)、ロージー監督の特色である不条理と暴力そしてサスペンスに溢れた、反ファシズム映画の傑作であると思います。

『夢を見ましょう』 Faisons un rêve

第44回 奈良日仏協会シネクラブ例会

44ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

★日時:2017年7月23日(日)13:30~17:00

★会場:奈良市西部公民館5階第4講座室

★プログラム:『夢を見ましょう』(1936年, 80 分)

★監督:サッシャ・ギトリ

★参加費:会員無料、一般300円

★飲み会:例会終了後「味楽座」にて ※例会・飲み会とも予約不要

★問合わせ:Nasai206@gmail.com  tel. 090-8538-2300

 

◆Date & horaire : le dimanche 25 juin 2017, de 13h30 à 17h00.

◆Lieu : Nara Seibu Kominkan, 5-kai (4ème étage) salle 4

(juste à côté de la gare Kintetsu Gakuenmae)

◆Programme : Faisons un rêve, 1936, 80 min.

◆Réalisateur : Sacha Guitry

◆Participation : gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membres

◆Réunion amicale : au restaurant Miraku-za

◆Renseignements : Nasai206@gmail.com  tel. 090-8538-2300

サッシャ・ギトリは1936年、彼の若き妻ジャクリーヌ・ドリュバックの影響下、それまで信用していなかった映画に自分の場を見出した。やがて演劇と同様映画においても多くの作品を産み出すことになる。成功をおさめた作品4本『新たな遺言』『とらんぷ譚』『私の父は正しかった』『夢を見ましょう』は、すべて彼の戯曲からの翻案である。『夢を見ましょう』は、1916年に書かれた劇を移し替えた作品。『とらんぷ譚』が、ギトリにとって映画の手法のあらゆる語りや視覚の可能性をきわめる喜びを示した作品であるとするなら、『夢を見ましょう』はより演劇らしい演劇の影響に回帰している。基本的には、妻・愛人・夫の典型的な愛の三角関係の風俗喜劇で、映画は動きの少ない演出における言葉の達人ギトリの腕の見せ所となる。

(アルレッティ、ミッシェル・シモンの)有名人をキャストにした社交場のプロローグを経て、物語は夫婦のだまし合いの会話に集約される。まずは夫(レミュ)と妻(ドリュバック)の夫婦の会話のやりとりがある。夫婦は友人の弁護士(ギトリ)を訪ねてくるが彼は不在、そこでの夫婦の反応と会話は二重の意味を含み、夫と妻それぞれ目前に迫る、ないしは起こり得る浮気を、絶妙の言葉の応酬で観客に推測させる。レミュの陽気なあけすけさ、それに対するドリュバックの気の効いた揶揄は、効果抜群である。

カップルの関係はすべて支配の問題となり、より気まぐれな方が優位に立つ。思いのままに恋情に身をゆだねるときだけ、彼らの協力関係が発揮される。愛し合う者たちが、いっしょに迎えた朝の目覚めを邪魔され、最終的に官能的逸楽の熱い約束を賭けて再び勝負に出た時、潜んでいたイロニーは消えてロマンチックな空想となる。しまいには、映画全体にみなぎる活力、機知、魅惑は、観客をすっかりとりこにしてしまう。

(ピエール・シルヴェストリ)

En cette année 1936 et sous l’influence de sa jeune épouse Jacqueline Delubac, Sacha Guitry trouve enfin ses marques dans le cinéma pour lequel il se sera montré si méfiant auparavant. Il s’avérera aussi prolifique qu’au théâtre en signant quatre films comptant parmi ses plus grandes réussites, tous adaptés de ses pièces : Le Nouveau Testament, Le Roman d’un tricheur, Mon père avait raison et Faisons un rêve. Ce dernier transpose justement une pièce écrite en 1916. Si notamment Le Roman d’un tricheur avait témoigné pour Guitry d’une certaine jubilation à exploiter toutes les possibilités narratives et visuelles de l’outil cinématographique, Faisons un rêve revient à une influence plus typiquement théâtrale. Sur le papier on a un triangle amoureux de boulevard femme/amant/mari assez typique et le film est une célébration du verbe virtuose de Guitry à la mise en scène assez statique. Le plaisir est donc ailleurs dans cette réussite.

Passé un prologue mondain où l’on croisera du beau monde au casting (Arletty, Michel Simon…), le récit se resserre pour un brillant jeu de dupe sur le couple. Ce sera d’abord celui du couple légitime du mari (Raimu) et de la femme (Jacqueline Delubac). Venu rendre visite à leur ami avocat (Sacha Guitry) absent, l’époux et sa femme par leurs réactions et dialogues à double-sens laissent deviner leurs infidélités imminentes ou possibles dans un brillant échange. La bonhomie et la truculence de Raimu font merveille face à l’élégante malice de Jacqueline Delubac.

Toutes les relations de couple seront affaire de domination où le plus fantasque prendra l’avantage. L’harmonie des couples ne peut fonctionner que quand le danger est écarté et qu’ils peuvent s’adonner librement à leurs passions. D’un coup l’ironie latente se dissipe pour la fantaisie romantique quand les amants rejouent leur premier réveil commun manqué et le final endiablé promesse de volupté. L’énergie, l’esprit et le charme de l’ensemble finissent par séduire totalement le spectateur.

(Pierre Silvestri)

 

 

『とらんぷ譚』 Le Roman d’un Tricheur

第43回 奈良日仏協会シネクラブ例会(2/26)案内
43ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

★日時:2017年2月26日(日)13:30~17:00
★会場:奈良市西部公民館5階第4講座室
★プログラム:サッシャ・ギトリ『とらんぷ譚』(Le Roman d’un Tricheur, 1936年, 78 分)
★参加費:会員無料、一般300円
★飲み会:例会終了後「味楽座」にて ※例会・飲み会とも予約不要
★問合わせ:tel. 090-8538-2300 Nasai206@gmail.com

◆Date & horaire : le dimanche 26 février 2017, de 13h30 à 17h00.
◆Lieu : Nara Seibu Kominkan, 5-kai (4ème étage) salle 4
(juste à côté de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◆Programme : Le Romain d’un Tricheur, 1936, 78 min.
◆Réalisateur : Sacha Guitry
◆Participation : gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membres
◆Réunion amicale : au restaurant Miraku-za
◆Renseignements : Naoko ASAI Nasai206@gmail.com tel. 090-8538-2300

『とらんぷ譚(あるペテン師の物語)』は、始まるとすぐ制作当時には考えられないような斬新さで、カメラの前に映画技師やスタッフたち全員を紹介するという型破りなことをして、映画のフィクション性を自ら明らかにする。続いてこの映画作家は、全知の語りのナレーションを用いて、1934年に刊行された自分の唯一の小説から引きだした華麗なる台詞を、無声の映像に独白する形で朗読する。会話部分のほとんどすべては俳優たちではなく、サッシャ・ギトリなる人物の流れるがごとき弁舌で朗読される。美学上の約束事からは外れるかもしれないが完全に革新的である。

だからと言って観客は少しも退屈することはない。すばらしい台詞と辛辣な皮肉を聞くからだ。ブルジョワ的モラルを手玉にとりながら、作家は巧妙なやり方で善悪の境界をあいまいにするのを楽しんでいる。賭博や金儲けへの情熱、結婚外の多様な男女関係―結婚はただ実利的なものと考えられている―、さらには同性愛(目立たないようにではあるが)といった、当時のデリケートなテーマに取り組んでいる。ギトリは、言葉を武器として喜劇力を存分に発揮し、当意即妙に道徳を踏みにじる口調で、観客を何度も噴き出させる。

(ピエール・シルヴェストリ)

D’une incroyable modernité pour l’époque, Le Roman d’un tricheur affiche dès le départ sa singularité en présentant devant la caméra tous les techniciens et collaborateurs du film, affirmant ainsi le caractère volontairement fictionnel du métrage. Ensuite, l’auteur se sert d’une voix off omniprésente pour déclamer un texte brillant issu de son unique roman paru en 1934. Ainsi, la quasi-totalité des dialogues n’est pas déclamée par les acteurs eux-mêmes mais par un Sacha Guitry très en verve, soliloquant sur des images muettes. Le postulat esthétique est pour le moins déstabilisant et totalement novateur.

Pour autant, le spectateur ne s’ennuie pas une seule seconde à l’écoute d’un texte magnifique et d’une ironie cinglante. Se jouant de la morale bourgeoise, l’auteur se plaît à brouiller les pistes et à rendre floues les frontières entre le bien et le mal. Tout en douceur, il aborde des thèmes délicats pour l’époque comme celui de la fièvre du jeu et de l’argent, des liaisons multiples hors du mariage – ce dernier étant conçu comme seulement utilitaire – et même de l’homosexualité (discrètement sous-entendue). Se servant des mots comme d’une arme, Guitry déploie toute sa force comique et nous fait rire aux éclats de nombreuses fois grâce à un ton cynique bienvenu.

(Pierre Silvestri)

 

『風にそよぐ草』 Les Herbes folles

第42回 奈良日仏協会シネクラブ例会(10/23)案内
42ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

★日時:2016年10月23日(日)13:30~17:00
★会場:奈良市西部公民館5階第4講座室
★プログラム:アラン・レネ『風にそよぐ草』(Les Herbes folles, 2009年, 104 分)
★参加費:会員無料、一般300円
★飲み会:例会終了後「味楽座」にて ※例会・飲み会とも予約不要
★問合わせ:tel. 090-8538-2300 Nasai206@gmail.com

◆Date & horaire : le dimanche 23 octobre 2016, de 13h30 à 17h00.
◆Lieu : Nara Seibu Kominkan, 5-kai (4ème étage) salle 4
(juste à côté de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◆Programme : Les Herbes folles, 2009, 104 min.
◆Réalisateur : Alain Resnais
◆Participation : gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membres
◆Réunion amicale : au restaurant Miraku-za
◆Renseignements : Naoko ASAI Nasai206@gmail.com tel. 090-8538-2300

87歳のアラン・レネはこれまでになく自分の感情を投入して、人の気持ちの変わりやすさについての何ともいえず魅力的な物語を作ったが、これは彼の最も斬新な映画となった。

「痛いじゃないですか!」とは、痛みを伝えると同時に非難の叫びだが、歯科医のマルグリット・ミュイールはこれを一日中耳にしている。映画の中の短いが面白いシークエンスのひとつである。この言葉が何度も繰り返され、そこに歯を抜く器具の拷問を止めてほしいと訴える患者の手の仕草が加わる。彼らは実際痛いのでありそのうめき声は正当なもの。それでもマルグリットは彼らの虫歯を探し、ただ彼らによかれと思って仕事をする。そしてこの不満の声が彼女を苦しめる。『風にそよぐ草』では、人生はあたかも歯科医の診察室のようだ。

不可避的に人が人を痛い目にあわせるのは、その人のためにと専心する時。悪意などまったくない。アラン・レネの小さな共同社会の中に敵意はない。にもかかわらず、人々は大いに苦しむ。警察官たちでさえも人を気遣って理解を示す善良な人々だ。それでもなお、誰もが人を悲しませ怒らせ辱める。「痛いじゃないですか!」この映画の隠れた合言葉かもしれない。              (ピエール・シルヴェストリ)

A 87 ans, Alain Resnais, plus empathique que jamais, compose un conte irrésistible sur la versatilité des sentiments pour l’un de ses films les plus audacieux.

« Vous me faites mal ! ». C’est le cri de détresse, mais aussi de reproche, qu’entend toute la journée Marguerite Muir, dentiste de son état. C’est une courte séquence amusante des Herbes folles : la répétition obsédante de cette petite phrase, ponctuée du même geste de la main des patients pour que s’arrête le supplice de la roulette. Ces gens souffrent et leur plainte est légitime. Pourtant Marguerite Muir, fouillant leurs caries, ne travaille qu’à leur bien, et toute cette grogne l’afflige. La vie, dans Les Herbes folles, est comme le cabinet d’un dentiste.

C’est en s’employant à faire le bien des gens qu’immanquablement on les blesse. La malveillance n’est nulle part. Pas de méchanceté dans la petite communauté humaine, pourtant bien souffrante, d’Alain Resnais. Même les policiers sont des braves types délicats et bien compréhensifs. Et malgré tout, tout le monde fait de la peine, contrarie, humilie. « Vous me faites mal ! » pourrait être le mot de passe secret du film.
(Pierre Silvestri)

『二十四時間の情事』 Hiroshima mon amour

第41回 奈良日仏協会シネクラブ例会(6/26)案内

41ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

★日時:2016年6月26日(日)13:30~17:00
★会場:奈良市西部公民館5階第4講座室
★プログラム:アラン・レネ監督『二十四時間の情事』(1959年, 90分)
★参加費:会員無料、一般300円
★飲み会:例会終了後「味楽座」にて ※例会・飲み会とも予約不要
★問合わせ:tel. 090-8538-2300 Nasai206@gmail.com

 

◆Date & horaire : le dimanche 26 juin 2016, de 13h30 à 17h00.
◆Lieu : Nara Seibu Kominkan, 5-kai (4ème étage) salle 4
(juste à côté de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◆Programme : Hiroshima mon amour, 1959, 90 min.
◆Réalisateur : Alain Resnais
◆Participation : gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membres
◆Réunion amicale : au restaurant Miraku-za
◆Renseignements : Naoko ASAI  Nasai206@gmail.com  tel. 090-8538-2300

いかにしたら、1945年8月6日の残酷な現実に、幻想と情熱的発見の考えを結びつけられるのか? はじめにあらゆる序列の形態-階級、人種、とりわけ苦しみの形態-をとり壊しながら。二人の人物が日本の街で出会う。男は広島に住み「エノラ・ゲイ」がその破壊力を示した時20歳だった。女はその爆撃の時、フランスのヌヴェールで別の侮辱に耐えていた。4年間、糾弾と威嚇のなかで暮らしてきた人々の復讐への渇望を満たすため、きわめて暴力的に、処罰され丸刈りにされた女たちへの侮辱である。男と女は互いに惹かれあい、彼らの苦しみと体はつながりあう。

映画は、ロブ=グリエの小説のように、患者に対する治療のように始まり、実写映像から男女の抱擁への大胆なモンタージュ、レネが愛着を抱く(ここでは病院の)廊下の映像へと移行する。この監督にとって廊下は、無意識や記憶へと通じるたくさんの半開きの扉を表わし、その記憶は、視覚的な閃光や往々にして奇妙な呪文のような発話、そしてとりわけとらえどころのないエマニュエル・リヴァと岡田英次(フランス語がわからないまま台詞を音声として発音する)の顔と身体によって再生される。この閃光は伝統的な語りを壊し、いっそう漠然として不透明な精神の語りを再創造する。超自然的幻視の観点が、音声―音楽は一瞬にして変化する―と反復を通じて、徐々にあらわになる。

(ピエール・シルヴェストリ)

Comment mêler à la réalité des atrocités du 6 août 1945 l’idée du fantasme, de la découverte passionnelle ? En mettant à bas, en premier lieu, toute forme de hiérarchie, celle des classes, celle des races, mais aussi et surtout celle des souffrances.

Deux personnages se croisent dans les rues de la ville japonaise : lui a vécu à Hiroshima même, avait vingt ans lorsqu’Enola Gay fit son œuvre ; elle était à Nevers lors du bombardement, et subissait d’autres outrages, tout aussi violents, ceux des femmes que l’on a punies, tondues, pour étancher la soif de vengeance d’un peuple qui ne vivait depuis quatre ans que d’accusations et de menaces. Ils se plaisent, leurs douleurs et leurs corps s’accouplent.

Le film commence comme un roman de Robbe-Grillet, très cliniquement, passant sans vergogne des images d’archives aux montages des enlacements, et aux couloirs (d’hôpitaux ici) que Resnais affectionne tant. Car un couloir, pour le réalisateur, représente une multitude de portes entrouvertes vers l’inconscient, la mémoire, reproduite par des fulgurances visuelles, une diction parfois étrange, incantatoire et surtout les visages et les corps fuyants d’Emmanuelle Riva et d’Eiji Okada (qui prononce son texte phonétiquement, ne connaissant pas le français).

La fulgurance détruit la narration classique pour recréer celle de l’esprit, plus diffuse, plus opaque. L’idée de l’apparition se développe progressivement, au fil des sons -la musique change parfois du tout au tout en une seconde-, et des répétitions.

(Pierre Silvestri)

『愛して飲んで歌って』 Aimer, Boire et Chanter

第40回 奈良日仏協会シネクラブ例会(2/28)案内
40ème séance du ciné-club de l’Association Franco-Japonaise de Nara

★日時:2016年2月28日(日)13:30~17:00
★会場:奈良市西部公民館5階第4講座室
★プログラム:アラン・レネ監督『愛して飲んで歌って』(2014年, 108分)
★参加費:会員無料、一般300円
★飲み会:例会終了後「味楽座」にて ※例会・飲み会とも予約不要
★問合わせ:tel. 090-8538-2300 Nasai206@gmail.com

◆Date & horaire : le dimanche 28 février 2016, de 13h30 à 17h00.
◆Lieu : Nara Seibu Kominkan, 5-kai (4ème étage) salle 4
(juste à côté de la gare Kintetsu Gakuenmae)
◆Programme : Aimer, boire et chanter, 2014, 108 min.
◆Réalisateur : Alain Resnais
◆Participation : gratuit pour membres et étudiants, 300 yens pour non-membres
◆Réunion amicale : au restaurant Miraku-za
◆Renseignements : Naoko ASAI Nasai206@gmail.com tel. 090-8538-2300

日本では昨年2月に公開されたばかりのアラン・レネの遺作。原作は前回とりあげた『六つの心』(Cœurs, 2006)と同じイギリス人劇作家アラン・エイクボーンの戯曲で、Life of Riley「お気楽な生活」です。イギリス・ヨークシャー地方を舞台にして、フランス的エスプリのきいた会話の応酬がくりひろげられます。文学・演劇・漫画・ファッションなど様々なジャンルが混ざり合いながら、レネ独特のおかしみが醸し出される、色彩豊かな映画です。

 
3組の夫婦が登場し、彼らは友人のジョルジュが末期ガンで余命半年と知り、各人が自分こそ彼の残り少ない彼の人生をよいものにできると自負し右往左往。当のジョルジュは最初から最後まで姿を見せぬまま、登場人物たちの心理を左右し彼らの隠されていた事実が露わになります。演劇と人生が交錯しつつ展開する夢幻的ドラマです。